話題の葬儀をまとめて検証
「遺体の行方」には何かと苦心することになる。
しかし、行方を求める遺体は確実に増えているし、今後増えることは間違いない。
私が「死者のホテル」の需要が高まることを、数年前から言い続けている所以である。
霊枢車の専業業者で業界のリーダーでもあるT自動車では、杉並区に「死者のホテル」を建設したのだが、稼働率は高いとのことである。
今後、どんどん「死者のホテル」が供給されることを私は期待している。
遺体の搬送と葬儀業かつて「葬儀は自宅で執り行う」が一般的、もっと言えば死ぬのも多くは自宅だった。
そうなると霊枢車が必要になるのは、自宅で死亡し自宅で葬儀を行った遺体を、火葬場へ搬送するときだけである。
したがって、一人の死亡に対し、霊枢車の需要は1回のみということになる。
ところが、多くの人が病院で死ぬ時代を迎え、葬儀は葬斎場で執り行うようになってきた。
すると霊枢車の出番は増え、一人の死者に対し、病院←自宅←葬儀会場←火葬場の計3回の需要が発生することになる。
遺体は白ナンバーの車輔で搬送してはならない。
要するに、許可を得ている霊枢車でなければならない、と貨物自動車運送事業法で定められている。
かつては免許制だったから、当該区域内での新規免許取得は著しく困難で、増車とて思うにまかせない。
要するに、霊枢専業事業者としては、需要を賄いきれないという一異事情があったのだろう。
特に東京都内では、病院から自宅への搬送(業界用語で「病院下げ」という)はおおっぴらに白ナンバーを使用していた。
では、「家族や近い親族が亡くなったので自家用車で火葬場へ遺体を運んだ」という行為が法律違反になるかというと、それは大丈夫である。
平成2年の法改正による規制緩和で、霊枢車は従来の免許制から許可制になったので、正規の霊枢車で病院下げ業務を行っている葬儀社も多くなっている。
現実問題として、霊枢事業者数、車輔数ともに急増し、霊枢専業事業者の経営を脅かす結果となりつつある。
土葬時代の「野辺の送り」を霊枢車に肩代わりさせるという葬送文化や、これを支える意識構造が、恋意的か自然発生的かはともかくとして、私たちの中に形成されていたことは事実である。
宮型霊枢車は葬儀のシンボルでもあった。
しかし伝統的習俗に基づく葬送文化が変容すれば、その文化装置たる宮型霊枢車もいずれ消える運命にあるのではないか。
都市化された超高層ビルの立ち並ぶ街並みに、神輿はミスマッチだ。
それではというので、クリスチャンであったO元総理が使用した「高級外車仕様」霊枢車により、宮型霊枢車の売上減少分を補填しようという流れが、目下大きくなりつつあるという。
人には好みがあるので、葬儀というイベントにおいても、どこに金をかけて見栄を張るか、それぞれ個人の選択であってよい。
生前乗ることはおろか、触ったこともない高級車に乗って火葬場へ行きたいと願えばそれも良し。
しかし、霊枢車は純粋な「運搬手段」だとの認識を原点と考えるべきだと私は思う。
要するに、安全に目的の物(遺体)を目的の場所(火葬場その他)へ届けることが本来業務である。
となると、バン型といわれるいちばん安い霊枢車でも「業」として成立し得る料金体系に再編成することが必要である(現行料金では、10キロ走って1万2千円程度)。
車種に大きな差を設けず、1回出動すれば3、4万円になれば採算に合うはずである。
そうなれば、「霊枢専業事業者」のあり方も必然的に変わらざるを得ない。
葬儀業と兼業の場合、たとえば数百万円のビジネスの中での数万円など、多少の変動があっても経営的にはほとんど問題にならないだろう。
「葬送バブル」も人並みにはじけた。
葬儀社や墓地・寺は好不況にあまり左右されないといわれた時代もあったが、それは昔日の夢物語だ。
今後、いわゆる葬儀(現在の葬儀ビジネスの守備範囲)の価格はどんどん下がっていく。
ただし、葬儀は見栄とハッタリのはけ口という側面を持っているので、派手で超高額葬儀のマーケットがそれなりに存在し続けることも当然あり得る。
少し横道にそれるが、知っておいた方がよいと思われるので、葬儀業について述べておく。
人が亡くなったとき、まず遺体の搬送の手配をすることになる。
たいていの場合、病院で亡くなるわけだが、多くの病院には指定または出入りの葬儀社がいて、婦長・事務長から紹介される。
ここが運命の岐路である。
最近は、病院と密着(癒着)した葬儀社は減少傾向にあるが、その構造はいまだ健在であるから、気をつけた方がよい。
葬儀社の紹介のされ方は2通りある。
葬儀社がダイレクトに来る場合と、都立病院のように、病室から霊安室までの施設内の搬送を、一体1000円で競争入札により外注しているケースがある。
名目としては、葬儀業者のビジネスチャンスの平等化を図っていることになる。
競争入札だが、入札価格はすべて一律(談合があったか否かは不詳)なので、30社とか40社入札への参加があれば、地方自治法(都立病院の場合)により抽選、つまりくじ引きということになる。
しかし、その入札条件が厳しい。
死亡の連絡が病院からあったら30分以内に到着し、死亡した病室、というより遺体に対する処置を終えた場所から病院内の霊安室まで搬送するというだけの仕事で、一体につき1000円の報酬である。
この仕事は2人でなければ困難である。
これではまずビジネスになり得ない。
にもかかわらず、数十社も入札に殺到するのは、病室から霊安室に行くまでのわずか数分から10分程度の時間に、葬儀の受注をしようというのだ。
葬儀ビジネスとしての営業チャンス獲得のために多額の投資をするのであり、その投資をめぐって、葬儀業界にさまざまな問題が生じる。
病院の看護士の場合、懸命に看護した患者が死亡し、死後の処置まで丁寧に施した彼女や彼らが、病院内の霊安室までの搬送業務を厭うはずがない、それなのになぜ外注なのか。
葬儀業者を病院関係者が紹介する弊害は周知のとおりである。
そこで病院はリベートをとっているのではないかなどと、痛くもない腹をさぐられたくないからである。
このようなことが現実に存在する以上、利用者は賢くならなければならない。
とりあえず自宅までの遺体搬送を発注し、その後の葬儀などについては、関係者が集まってから決める、といって、一旦お引取りいただく。
他に適当な業者がいなければ、企画書や見積書を十分検討して、その業者に発注する。
(見積書をチェックし業務管理をする専門職業人「葬送支援相談員」という専門家も現に存在する)この勇気を持つことが、何よりも肝心である。
まともな病院は、指定制度を廃止し、紹介してくれと頼まれれば、複数の業者の中から遺族(利用者)が選択をするというシステムへ移行する傾向にある。
病院専属業者しか選択の余地のない場合の利用者の知恵としては、自宅までの搬送を発注し、自宅に着いたら運賃の精算をする、という方法がベストだ。
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